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【読書】私の赤くて柔らかな部分 平田俊子


この本は日経の半歩遅れの読書という記事をみて、なんとなく借りた本。平田さんという方の本は初めて読んだけど、書評どおり「言葉の魔術師」というだけありさくさく心に入ってくる。おそらく、男性より女性の方が共感しやすい作家さんなのかなと。

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前置きはこれくらいにして、ストーリーは喪失感をもった30代独身女性がふらりと知らない街に住み着いて、心の整理をするお話。ここでの喪失感は失恋と上司の死というダブルパンチで、数ヶ月仕事もできず引きこもっている主人公が、上司のお別れ会に参加するところから始まる。

渋谷と表参道の間の会場に行くまでに、別れた相手を思い出しつつ、それと重ね合わせて上司に対しても、信じられないという思いに占領されていく。お別れ会の会場に着いても、違和感と居場所のなさですぐに外にでてしまい、帰宅するために電車にのるが、かえりたくないという気持ちから電車に乗り続けて知らない街に着いてしまう。そこで、東京とはちがう時間の流れ、人々との交流などを通して、次の人生へのパワーを蓄えていくという感じでしょうか。

ストーリのほとんどが、過去の男との思い出や後悔などのどうどう巡りで、生きているけど会えない人への未練と、死んでしまったけどなんだか信じられなくて、会えそうな気がする上司との対比はなんかリアリティを感じてしまいます。

この別れた相手はダメダメ人間で、自分勝手の典型的な人。友人からもし相談を受けたら、冷静に「あきらめな」と確実にいえるのだが、これが当事者となると分かっていても。。。。ということなんだろうなあ。

30代独身女性の喪失感として、心の動きや立ち直り方に関しては、やけにこの主人公の気持ちに共感してしまいますね。なんだろう、若いときと違って次があるという希望より、失ったものに対する執着心のほうが勝っていて、なかなか断ち切れない、次ぎにいけない。だけど、時間は確実に過ぎていて、うまく立ち直れないと将来への不安もある。。どこか冷静だけど、感情に素直に対峙したいという無意識も働いているような気もする。

ということで、ちょっとあり得ないと思いつつ、知らない街に1ヶ月以上も滞在して、これらの心の葛藤を整理していく描写にとてもリアリティと共感することができたわけです。確かに働きながらとか、1週間旅行してっていうのは中途半端すぎる。数ヶ月という時間が次の人生へ歩き出せる時間なんじゃないのかな。

設定が似ているので共感ができたけど、これって男性が読むとどう感じるんだろう?おそらく感じ方が違うんだろうな。とにかく、映画なんかにするととってもいいものができそうな気がする、良い本でした。

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